新国立競技場建設問題


新国立競技場建設をめぐって連日ニュースでも2500億円にものぼる高額建設費の是非が問われています。

新国立2520億円了承=近く契約、10月着工―スポーツ振興センター

これまでのスタジアム建設の費用からしたら常識はずれの高額なのは明らかで、複雑な工法を必要とするからそんなに経費がかかってしまっています。もちろん、デザインは大切ですが、それ以上に大切なのは、競技者と観客にとって見やすいことの方がプライオリティが高くあるべきですよね。

日本サッカー界が世界の頂点を目指すなら、A代表に象徴されるトップのプルアップも大事だけれども、それより小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、シニア、女子といったすべてのアマチュア選手の数を増やすボトムアップの方がもっと重要です。なぜならば、FIFAランキングベスト10に入るような国のサッカー人口/総人口は、明らかに日本より大きな数字となっています。

日本サッカー協会に登録している選手の総数は約96万人。それに比べてドイツは人口約8,000万人ですが、670万人の選手がいます。ドイツは特別多いことを割り引いても、その国でナンバー1スポーツになることは当たり前で、なおかつすべてのカテゴリーでサッカー人口を増やし、サッカーマスコミなどのレベルも上げることも大事。サッカーに関わる人たちのパッションの総量で並ばないと、そういう国と肩を並べることはできないと思っています。

そういった状態を目指すには何がネックになるでしょう?

そうです。ただでさえ足りないスポーツ施設です。いくらいい指導者やメソッドがあったって、ハードがなければ始まらないですよね?今でさえ、多くのクラブは練習場確保に苦しんでいるのに、数年後に今の何倍も選手が増えたら、現実には対応できないです。

東京オリンピックはメダル何個取るとかじゃなくて、国民誰もがスポーツを日常的にやる「生涯スポーツ立国」実現のスタートにしてほしいです。かつて農耕民族のわれわれ日本人は、田んぼや畑で体を使って汗を流してきたわけで、人間は本来を生物的に体を使って生きていくようにできているんです。それが現代社会では、一日中パソコンの前や家の中で過ごすから成人病だったり、ストレスだったり、いろんな問題が起きるんです。

すべての人が毎日スポーツをやるのは無理にしても、せめて週末自分の好きなスポーツをやるようになったら、劇的に成人病患者は減り、医療費や医薬費が激減し、浮いた数千億円を身近なスポーツ施設建設に投資してもらえばいい。

そういう意味で、スポーツは趣味ではなく、歯磨きのように生活習慣に組み込むべきものだと思っています。多くの人は小・中・高校の間どこかでスポーツをやってきたはずです。それが戦後日本のスポーツは学校に入ることにより、教育の「育」が入って「体育」になってしまった。そのことで先輩後輩や挨拶、球拾いといったことから、先生が指導者になることによって進路や成績が人質になって文句も言えないような環境が体罰を引き起こした一因にもなってるケースはあると思います。だから、みんなどこか途中でスポーツをやめてしまう。続けてても学校の切れ目がスポーツの切れ目になってしまうんです。

またスポーツには教育的な側面もあります。先日のワールドカップでなでしこジャパンが準優勝という素晴らしい結果を残して、国民の多くが感動した要因はなんでしょうか?なでしこより遥かに大きなイングランドやアメリカの選手相手に一生懸命戦う姿と勇気、友情、団結といったものが我々の琴線に触れたからではないでしょうか。人間は一人の力ではたいしたことができないけど、多くの人たちが結集することでより大きな困難に立ち向かうことができることを教えられるのもスポーツの素晴らしさではないでしょうか。

「生涯スポーツ立国」実現のために一番大事なことは、スポーツ施設をどうやって増やしていくかということです。アーセナルSS市川のホームグランド「北市川フットボールフィールド」もそうした思いで作られました。新国立競技場の屋根に950億円もの費用がかかるなら、うちのグランド建設費約1億円だから、950個もグランドできる計算になります。もちろん土地代は含まれていませんが、新国立競技場の屋根代で首都圏に600個、関西圏に350個のグランド作ったら、10年後に世界ランキング10位以内はぐっと近づくはずです。以上書いたことは、サッカー関係者視点すぎることは重々承知していますが、新国立競技場のニュースを見るたびに、お金をかけるところがそこなのか、心を痛めています。

 


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